● ザ・裸ネクタイコンテスト 日吉若編  ●

 第一選手が無事終了してほっとしつつ、エントリーリストに目をやると次は日吉選手の番だった。ああ、あのちょっと目つきの悪いツンデレか! といっても、我々は試合会場で『ツン』の面しか見ていないので、『デレ』はあくまでもぼんのうクラブとしての妄想である。

 ああ、ここでメス猫の皆様にインフォメーションです。
 会場の方より『裸ネクタイコンテストというからには、素っ裸にネクタイと思ったじゃないか』という声をいただきましたが、なんと言っても中学の学園祭でありますし、ぼんのうクラブ活動規約第17条『隠すとこは隠したほうが、よりもえる』という掟もありますので、脱いでいるのはシャツのみ!というチラリズムの王道でコンテストは進行させていただきます。
 尚、会場に足を運ばれる際、仮面をつけての参加でも結構です。
 どうぞぞんぶんにお楽しみください。
 はい、まもなく日吉選手の登場です。

 うーん、しかし常に不機嫌そうな彼、裸ネクタイなんて格好をさせられて大丈夫なのだろうか。
 少々不安な私の気持ちをよそに、舞台袖から日吉選手が出て来た。

「一体、なんなんですかね、やってられませんよ」

 案の定不機嫌そうにぼやきながら、彼は登場するのだ。
 よく締まって細めでいながらも姿勢の良い裸の上半身に氷帝のネクタイ、長めの前髪の奥の不機嫌そうな目つき、会場のメス猫たちのため息が聞こえてきそうだ。
 
 パチパチパチパチパチ!

 すると、空に響き渡るような拍手が鳴った。
 会場からではなく、舞台から。
 部長が、一人でわれんばかりの拍手をしていたのだ。
「さすが、日吉くん! 自分のキャラを心得てる! その不機嫌そうなツンデレっぷり最高だ!」
 滑舌よく言い切る部長の言葉に、日吉選手は少々戸惑いながらも憮然とした表情を見せる。
「いや、だから、こんなことさせられてむかついてるだけで、別にデレてないでしょう、俺は」
「むかついて機嫌悪そうにしながらも、なんだかんだ言って、裸ネクタイになっている、それ自体で『デレ』! つまり、ツンデレ!」
 部長は満足そうに言いながら、点数表に何やら書き込んでいる。
「ちょっ、ちょっと! 俺に高得点つけないでくださいよ! 俺、こんなことで評価されるなんて、ごめんですからね!」
「おっ!」
 部長は手を止めて、点数表をのぞきこもうとする日吉選手を見上げた。
「このようなイベント、参加はするけど完璧やる気なしでベース無視かと思いきや、なんだかんだ点数を気にする! まったくもって、ほどよいツンとデレ!」
 またもや熱心に点数表を埋める部長。
 日吉選手は少々キレ気味だ。
「だから、デレてないって言ってるだろ! いい加減にしてくださいよ!」
「そして、ほどよく緩んだネクタイ、上半身裸を意識したかのようなベルトの位置、結構裸ネクタイを意識して着こなしている。デレ!」
「ふっ、普通に着てるだけだ! 意識してねえぇぇえええ!」
「明らかに照れている。デレ!」
 怒り狂った日吉選手の怒鳴り声をものともせずに点数表を埋め続ける部長、さすがぼんのう一筋15年だ。
 というか、日吉選手のツンなど、ぼんのう女子には程よいスパイスでしかない。かわいらしいものよ。フッ。

日吉選手のお披露目 以上!

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