● ザ・裸ネクタイコンテスト 樺地崇弘編  ●

 続いての登場は、樺地選手である。あの巨漢の選手だ。うーん、彼の裸ネクタイはちょっと想像がつかないが、どうなのだろうか。とりあえず、芥川選手や跡部選手のお世話で大変そうだという評判はよく耳にするけど、大丈夫かなー。
 時間になってもなかなか登場して来ない彼に、スタッフが控え室まで声をかけに行ったようだ。
 そして、重めの足音とともに、樺地選手が急ぎ足で登場した。
「……!」
 私と部長は、彼の姿をじっと見てから互いに顔を合わせた。
 樺地選手は、その短い髪を乱し、ベルトもあわてて止めた様子で少し緩いし、ネクタイは結びかけであった。
 その意外な様相に、私たちは少々戸惑ってしまった。
 芥川選手に続いて、樺地選手まで露出過多の芸風!!??
 セクシーと言えなくもない状況ではあるのだが、樺地選手がこういったありさまというのは、どうにもかわいそう感がぬぐい去れない。

「樺地くん、どうしたの?」

 驚いた部長は樺地くんを見上げながら尋ねるのだが、彼はネクタイを結びなおしがら、すいません、とでも言いたげに部長に向かって頭を下げるばかり。
「いや、謝らなくてもいいんだけど……えーと、ネクタイ、結んであげようか?」
 そう言って、樺地選手のネクタイに手をかける部長に私はかけよった。
「部長! ぼんのうクラブ活動規約第27条『ぼんのう対象へのおさわり禁止』に抵触するんじゃありませんか!」
「いや、本体じゃなくて、ネクタイだけだから」
「でも、ずるいんじゃないですか! か、樺地選手にネクタイを結んであげるなんて!」
 私の抗議もものともせず、部長は樺地選手のネクタイをくるくると結んだ。
 ちぇっ、と思いつつも、その樺地選手の姿を見ていると『部長! ナイスぼんのう!』と賞賛せざるを得ない。
 大きな体をかがめて申し訳なさそうにネクタイを結んでもらう樺地選手は、なかなかにナイスだったのだ。
 普段から少し猫背気味に歩く彼。
 背中の筋肉がとてもきれいで、前屈みになったり動くたびに見事に広背筋、僧帽筋が強調されるのだ。かっこいいなー。
「どうしたの、誰かになにかされたの?」
 心配そうに尋ねる部長の言葉に、樺地選手は黙って首を横に振った。
 少なくとも、私たちの企画したイベントで裸ネクタイにされたということは確かなのであるが。
「大丈夫? 寒くない?」
「ウス」
 樺地選手は、やけに疲れた様相ではあるが、素直に頷いた。
「ネクタイ、きつすぎない? くるしくない?」
「ウス」
「出番が終ったら、ちゃんと服着て、ゆっくり休んでね」
「ウス」
 わー、裸ネクタイ姿でも、樺地選手は樺地選手だなあ。
 会場のメス猫のみなさんが、ほわわわーんとするのがわかる。
 普段ぼんのうまみれの部長も、慈愛に満ちた目で樺地選手を見上げていた。

 樺地選手のお披露目 以上!

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