ルドルフ、しょっぱなからなかなかテンション高かった!
ええと次は二年、不二裕太選手!
彼と青学の越前選手との腹チラ勝負は、腹チラ史に残る名勝負のひとつだったなー。そうやって彼の試合を感慨深く思い返しつつコールをすると、今度はきちんと不二裕太選手一人で中央にやってきた。
「……ども」
不機嫌というわけじゃないけれど、どうにも居心地悪そうにポケットに手をつっこんだまま中央に立った。
ゆるく、というよりいい加減に結んだネクタイ。多分、普段だったら観月選手に注意されるだろうようなテキトーな結び方は、このいでたちにはなかなかナイスだった。
うーん、やっぱりやんちゃキュートキャラは裸ネクタイ鉄板だ。
今回の参加者の中では数少ない私と同級の二年生、中でも私は個人的に彼が一番気に入りなので、今回のステージは気合いが入る。
ああ、このアシスタントの特権を利用して、何から聞こう!
電話番号?
いや、教えてもらったとしてもそれは寮の代表番号だろう。
ええと、観月選手にいつもどんな風に鍛えてもらってるかとか?
いや、なんだか下心っぽい?
あー、それにしても裕太選手は丸井選手とタメを張るくらいにお菓子好きみたいだけど、やっぱり腹はきゅっと引き締まってるなー。
ええと、お菓子好きだけど血糖値は大丈夫ですかって聞く?
少々うわついた私がぼんのう混じりに頭の中で諸々考えていると、部長の一言。
「不二弟くん、お兄さんは元気?」
部長! いきなり!
裕太選手はきゅっと眉間にしわをよせて部長を睨んだ。
「元気スけど。なんなんスか?」
越前選手との試合の頃みたいにはカッカしないけど、さすがに不機嫌そうな顔になってくる。
部長!
私は裕太選手に、お菓子の話やルドルフの寮生活のことなんかが聞きたいのに!
「いや、こういう格好は裕太選手と、お兄さんとどっちが似合うかなーと思って」
彼の様子におかまいなく、部長は続ける。
「だったら兄貴を呼べばいいだろ!」
「青学の制服はネクタイがないからね」
「そんな事、俺に言われたって知らねーよ!」
裕太選手はイライラしたように声を荒げた。
「っっしゃ〜〜〜!」
するといきなり部長の雄叫びとガッツポーズが。
「やっぱり裕太選手の裸ネクタイには、ちょっとふてくされて攻撃的な感じがいいな! いや、素直なのもいいけどね」
部長は嬉々としてに点数表を埋め始めるのだった。
ぶ、部長!
なんと、性格の悪い……!
私がなんとかフォローしようとあたふたしてると、裕太選手はテキトーに結んだネクタイをほどいてステージの床に投げ捨てた。
「んだよ! もう、わっけわかんねーな! 俺、帰るから!」
そう言うと、さっさと舞台袖に去ってしまった。
「むふーん」
部長は満足そうにその後ろ姿を眺めている。
「部長! 私、裕太選手とまだ一言もしゃべってなかったんですよ!」 」
私は裕太選手のネクタイを拾い上げて部長を睨んだ。
日吉選手風に言えば、こいつ、ぜったいいつか下剋上だ! ぼんのうで!
以上!