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モジモジサバイバル with 四天宝寺中


遠山金太郎


 私は人生最大のピンチに立たされていた。
 ここは無人島。
 そして森に入り込んだ私は、沢で足を滑らせて半滑落状態。むき出しになった木の根っこに掴まってぶらさがっているところ。湿った木肌はつるつる滑って、もうだめかも!
「おーい、ワイやでー! どこいったんやー! おらんのかー!」
 その時響いてきたのは、ウチのテニス部スーパールーキー金ちゃん、遠山金太郎の声だった。
「ここやぁ〜、金ちゃん、助けて〜!」
 私が上方を見上げながら蚊の泣くような声を搾り出すと、にょき、と金ちゃんの顔がのぞいた。
「こんなとこで何やってるん!」
 言うが早いが、金ちゃんはそのままものすごい勢いですべり降りてくる。
 ダメダメ! 金ちゃん、一緒に落ちちゃうじゃん!
 私が思わず目を閉じると、突然私の腰に力強い腕。
 おそるおそる目を開けた。
 しっかりと木の根を掴んだ金ちゃんが、片腕でがっちりと私の腰を捕まえていた。
「ワイにしっかりつかまっとき!」
 金ちゃんはそう言うが早いが、おサルみたいにするすると沢を登り始める。私は必死で金ちゃんにしがみついた。金ちゃんは私の体重なんてものともせずぐいぐい登っていく。金ちゃん、私よりも背が低いのにこんなに力強い!
 登りきって安堵の深呼吸をしていると、金ちゃんが『メッ』と言う。
「一人でこんなとこ来たら危ないやろ! ……まだ、怒ってるんか?」
 金ちゃんは一度私に怒った顔をしてみせてから、そしてシュンとした表情になる。
 そう、もう一度言うけれど、ここは無人島。
 夏合宿の朝練前に海岸で遊んでいたら、船が二艘あって、ふざけてそれに乗り込んだ私たちテニス部面々は、調子に乗って沖に出すぎてしまったのだ。特に、金ちゃんと謙也が競い合ってものすごい勢いで漕ぐものだから。しかも、島を見つけて上陸してテンション上ったまではいいけど、アホな私たちは、船をロープでつなぎもしなかったから気がつくと船は二艘とも潮で流されてしまっていたのだ。
「……金ちゃんに怒ってるわけちゃうよ。むしろ、ちゃんと私がマネージャーとして皆を止めなアカンかったんやもん……」
 言いながらも、私の声は沈んだまま。
 皆でこの島を見て周ったけど、どうやら人が住んでない。携帯の電波も届かない、無人島らしいのだ。私たち中学生だけで、どうしたらいいんだろう。途方にくれてしまう。
 ついうつむいている私を、金ちゃんが覗き込んできた。まゆ毛がハの字になって、心配そうで。いつも金ちゃんがダダをこねる時にみせるフテくされた顔とはちょっと違う。
「なあ、泣かんといてな。大丈夫や、ワイがついてるやん」
 手を伸ばして、ガシガシガシと私の頭をなでてきた。
「泣いてへんよ!」
 私は一生懸命な金ちゃんがおかしくて、つい笑った。
「ホンマやな? 泣かんといてや。なあ、もしこの島から帰れんくなってもな、ワイがちゃんとお嫁サンにもらったるから、心配せんでええのやで」
 そして真剣な顔で言うのだ。
「ええっ!?」
「結婚式の時には、銀さんにお経読んでもらおうな!」
 金ちゃんはニカッと笑うと、私の手を引いて、森の出口にぐいぐいと引っ張っていった。

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